ヴァイスtype0メタゲーム考察その2

 今回も前回同様世界に誇る最高峰トレーディングカードヴァイスシュヴァルツの特殊フォーマットであるtype0の記事だ。この2ヶ月の間にどれだけ考察が進み、メタゲームが変化したかを見ていこう。

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前回の記事でも述べたように剣聖ラインハルトを軸とした【ラインハルトコントロール】はtype0における圧倒的なTeir1だ。今回の記事はこのラインハルトをどう打ち倒すかに焦点を当てている。では改めてラインハルトの強みを見ていこう。
 
パワー20000と相打ち不可能力
 
単純明解なパワーライン。戦闘で負けることはほぼ無いため場に置いておくリスクが無い。type0に他に採用されうるカードとして七海があるがCXコンボを成功させてもパワー16000までしか届かない。
 
移動能力
 
 仮に何らかの手段でパワー20000を超えれたとしても移動能力によって逃げられる可能性がある。単純なパワーで越えるためには3面パワー20000を要求され、CX以外のカードを極力減らしたいフォーマットでそれをしようとするのはあまりにも無謀である。
 またこの移動能力はラインハルトミラーにおいても重要であり、ラインハルトを差し出すか否かを先出したプレイヤーが決められるのである。(例:1000+1を打たれたら逃げる。無ければ相打ちで差し出す。)ラインハルトがラインハルトの解答になる理由はミルの先撃ちした際にターンの開始時にみくるとセイバーが場に戻ってしまい先撃ち側のラインハルトが条件を満たせなくなってしまうからである。ラインハルトコントロールは単騎ラインハルトに対しては解答はなく、ゲームが膠着するものだと考えていい。
 
思い出送りと大活躍
 
 恐らくこの2つの能力がtype0において最も重要な能力だろう。このフォーマットの勝敗は相手のキーパーツをいかにして思い出に送るかによって決まる。この能力によって前列にキャラを置いたままターンを終えることは非常にリスキーなプレイとなる。前列として使用するキャラは全てみくるのバックアップを要求されプレイと構築を狭めざるを得ないのである。
 また大活躍能力が思い出送り能力をより強力なものにしている。基本的に思い出に送らなければあらゆるアタック誘発を発動できない。またストックすら貯めさせないため圧倒的な盤面支配力を有する。自ターンで相手の前列を除去するだけでなく相手ターンに蓋をするのはラインハルトだけの特権であり、ラインハルトの解答がラインハルトとなる理由にもなっている。
 
 カウンター不可能力
 
 前列に残った(みくるで逃げ損ねた)キャラを古典的な罠や紫炎と緑炎をケアすることなく潰す能力。またラインハルトミラーでカウンターをケアする必要が無いのは魅力だ。(前述の移動能力により選択権は相手にあるのだが)また今後刷られる可能性も含めてあらゆるカウンターを環境から駆逐している。
 
 
 「相手のカードに選ばれない」という最上級の除去耐性。なぎさを含むtype0環境のあらゆる単体除去カードが当たらない。またこの能力の恐ろしい点は相手のカードの対象にならないだけでなく、発生源が「相手のカード」ならばラインハルト側のプレイヤーが選ぶことになっても選ばれない点にある。
  ※前回の記事で「紫炎と緑炎」がラインハルトの対策になると述べたがそれは全くの誤りだ。これからtype0を始めようとしてくれた初心者諸君、常日頃からtype0をプレイしてくれている現役プレイヤーに誤った情報を与えてしまったことを深く謝罪したい。
 
すべての発動条件となる経験能力
 
 本来デメリットとなるはずの経験能力だがことtype0においてはメリットになりうる。ラインハルトミラーにおいてミルの先撃ちが悪手となるのが定石だ。しかしラインハルトを使うプレイヤーは必ずレベル置場にレベル3(基本的にラインハルト)を置かなければならない。つまりレベル1になった瞬間にラインハルトを採用してるかしてないかがお互いにわかってしまうのである。これが何を意味するかと言うとラインハルトミラーでないとわかればラインハルト側はアグロプランに移行することが悪手とならないのである。
 ※前回の記事で【ハンデスミル】はラインハルトコントロールに見せかけてプレイすると述べたが以上の理由からラインハルトを採用しない限り不可能である。ハンデスイベント4枚に加えレベル置場に置くためだけのラインハルト2枚を採用することは重すぎるという評価を下さざるを得ない。「紫炎と緑炎」もラインハルトには効かず、ハンデスもアグロプランに切り替えられると通用しないため【ハンデスミル】は人知れずメタゲームから去ったと言ってもいいだろう。
 
  
 
 さてデッキリストの解説に移る前にtype0プレイヤーに衝撃を与えたカードを紹介しなければならない。そう扉の「約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)だ。このカード登場により既存の構築は大きく変わり、より完成度の高いものとなった。この扉の強みを一つずつ見ていこう。

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ストブから扉へ

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手札コストの確保

 従来の構築であればセイバーとみくるでミルを実行した際に、ストブと2パンでストック+3、セイバーとみくるのコストでストック-3。一方手札は撃ったCXとセイバーのコストで-2。つまり毎ターンミルを行えば手札は減ることとなり、クロックドローの必要が生じてしまうのである。これを扉にすることによって手札にキャラクターさえ確保していればセイバーのコストで切ったキャラを2パンの内のどちらかで扉をトリガーして回収できる。
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  ストック3と手札1枚のコスト
 
ストックの確保
 ストブから扉に切り替えた際の弊害としてストックが貯まらないという問題がある。ストブの分のストックがそのまま減るのでセイバーとみくるの2パンだけではストックが減り続けてしまう。この問題を解決するために3パン目のキャラが必要となる。そこで白羽の矢が立ったのが「書き初め 高海千歌」である。CXの多いこのフォーマットであればほぼ確実にダメージがキャンセルされ、ストックに飛ぶことができる。また上の能力によりCXをデッキトップに固定できるため万が一効果が発動できないということもない。1パン目の千歌のアタックと能力でストックを2枚増やすことができる。そしてストックの1枚目の千歌をセイバーのコストで掃き、扉で回収すれば次のターンも同じ行動がとれる。この動きは手札も消費せずストックも1ずつ貯まるためストブの時に比べて遥かにミル性能が向上したといえるだろう。

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 千歌と扉の採用によって得られるメリットはストック増加だけではない。千歌は自分で死にに行けるキャラでありラインハルトの発動条件を阻害しない。またミルの返しにラインハルトを出された際の解答にもなる。ターンの開始時に戻ってきたみくるとセイバーを圧殺して千歌とラインハルトを展開し扉を撃ちながら2パンすれば2枚の扉トリガーで控えに落ちたみくるとセイバーを安全な手札へと回収できる。また扉の手撃ちはストブと異なりパワーが上がるため相手のラインハルトは移動を使わざるを得ずラインハルトが相打ちになる心配もない。これはラインハルトミラーにおけるミルの先撃ち不利の定石が完全に崩れ去った瞬間であり、アグロプランが肯定された瞬間でもある。扉の「約束された勝利の剣」の誕生はtype0の歴史において重大な出来事だといえるだろう。
 
回復キャラの採用
  type0においてダメージを受ける瞬間が一つだけ存在する。それがリフレッシュの際に発生するリフレッシュダメージだ。これはtype0始まりのデッキである【CX6000】が乗り越えれなかった問題であり、type0最大の関門ともいえる。これはTeir1である【ラインハルトコントロール】においても同様で回復とラインハルトの両立は課題の一つであった。回復キャラを展開してしまえばラインハルトの条件を満たすことができないためである。この問題も扉が解決してくれた。「大切な何か 美砂」は回復持ちのキャラであり、チェンジを空撃ちすることで自ら控え室に行くことができる。それをラインハルトのアタックで扉をトリガーすることでラインハルトのパワーを維持しながら手札に回復ソースをキープできる。

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七海のシナジー後のリカバリ
  「夏の思い出 七海」はミルを全面的に否定するtype0を代表する強力なカードだ。しかしラインハルトを突破できないこと、戻す先が控え室であるため再びミルの対象になってしまうことが欠点だった。しかし扉の登場により七海で思い出の七海を控え室に戻し扉で回収することで2枚でループすることが可能となる。

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 以上のように扉の参戦はtype0の環境を大きく変えるものとなった。これにより環境における【ラインハルトコントロール】の強さは確固たるもののとなり、またしても環境はラインハルトに支配されてしまった。(アグロプランの肯定によりハンデスミルが環境から姿を消していることも大きい)しかしヴァイスの歴史は長くカードプールは広い。当然ラインハルトへの解答は既に存在しているのである。
 
汎用性の塊 「具象化しりとり」
 

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 まず紹介するカードはこの「具象化しりとり」だ。これは対象をとらない全除去カードの中でもコスト3と破格の軽さを誇る。3宣言することで選ばれないラインハルトも控え室に送りセイバーのミルの対象に加えることができる。またこのカードの特殊かつ強力な点は記憶によって発動する点にある。扉で回収できないイベントは常にミルの対象になりうるのだがこの具象化しりとりは自己の能力でそれを解決している。また除去以外にもリアニ目的で使える汎用性の高さもこのカードの魅力だ。コストはかかるものの電源のような使い方もできる。相手にも利用されるためラインハルトの早出しには向かないが七海やセイバーのリアニからそのターンにシナジーを発動できるのは電源にはない強みである。
 一見環境を変えるに十分なパワーカードに見えるが当然欠点はある。それは除去先が控え室であるため相手にアンコール③されてしまう点である。千歌によってコスト問題が解決しているため3コスト貯めることは容易で相手は当然このカードをケアしてくるだろう。よって具象化しりとり以外にもう一枚カードを要求することとなる。
 

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それがこのしろはである。CXの多いこのフォーマットであれば確実にアンコール封じの効果を成功させることができるだろう。またしろは自体はキャラのため扉によっての回収が可能だ。扉の登場はラインハルトを強化するだけでなくそのメタカードの強化にも繋がっている。
 またもう一つの欠点は相手のみならず自分も巻き込むためラインハルトミラーでは使えない点である。アンコール封じは相手のみのため自分はアンコールで盤面を維持できるものの相手ターンにも発動するのでアンコールに合計6コスト、具象化しりとりの使用に3コストと非常に重いコストを強いられる。具象化しりとりはラインハルトを使わないデッキでこそ輝くカードであり、差別化が図られた瞬間ともいえる。
 
Deck.10【ノーラインハルト】
 

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ラインハルトへの最高のメタカード 「くらやみ」

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  一見複雑なテキストをしているが要約すると「このカードは相手の効果に選ばれない。」効果を持つキャラだけを思い出送りにするカード、即ちラインハルトだけを除去するカードである。ラインハルトを除去することだけを目的とするならば最良のカードであり、type0を見越したブシロードの救済措置と捉えることもできるだろう。
 具象化しりとりとの相違点として1コストとういう軽さ、レベル3のため電源早出しに対応しない点、控え室を経由せず直接思い出に除去できる点、ラインハルト以外のキャラを除去できない点、相手のラインハルトのみを除去できる点など枚挙に暇がない。一つだけいえることは具象化しりとりが非ラインハルトの向けのカードであったのに対しこのくらやみはラインハルトミラー用のカードだということである。ラインハルトを使用する側にとって対処したいカードは相手のラインハルトのみであるから除去範囲は問題にならず、ラインハルトを維持しながら相手だけを処理できるのは大きすぎるメリットだ。またミルの対象になってしまう欠点もリフレッシュ直前に撃てば問題にならない。そもそもラインハルトミラーにおいては移動能力によってゲームが膠着するのが常であるため好きなタイミングでくらやみを放つことは想像以上に容易である。
 ラインハルト環境を終わらせるかと目されたくらやみであったがまたしてもラインハルトに取り込まれる皮肉な結果となってしまった。
 
Deck.11【ダークネスラインハルトコントロール
 

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総括

 扉の「約束された勝利の剣」の登場によってtype0のメタゲームはめまぐるしいほど変化した。新しいカードの登場はあらゆるフォーマットに影響を及ぼす分かりやすい実例でありTCGの醍醐味ともいえるだろう。【ノーラインハルト】という新しいデッキが生まれた一方で【ラインハルトコントロール】は未だに健在とラインハルト中心にメタゲームが進んでいることに変化はない。次の記事ではラインハルト環境が終わっていることを切に願う。それではよきtype0ライフを!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 


 さてこの記事を最後まで読んでくれた諸君には銀枠(ジョークエキスパンション)込みのtype0環境の解説をしなければならないだろう。まず前回の記事で書いたとおりこの環境のTeir1は【エクゾディアジブリール】である。

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 デッキ枚数18枚と全力まで枚数を削り先攻ワンキルに特化したコンボデッキだ。この環境を変えるためにはより高い確率で先攻ワンキルできるデッキを成立させる必要がある。
 
Deck.EX2【エムラシュート】

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 前回の記事でも少し触れたがこの特殊なイベント「やくそくされたウィークエンド、シャロもくる?」を先攻1ターン目に使用することを目的としたデッキである。(ヴァイスシュヴァルツを基にしたTCGであるMagic The Gatheringに約束された終末、エムラクールというカードがあり唱えた際にこのカードと同じ能力が誘発する。)銀枠環境では有力なデッキの一つであったが新弾の強化があったためここで紹介したい。新弾の強化は言うまでもなく角川スニーカー文庫富士見ファンタジア文庫の特徴を3つ持つキャラ達である。
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控え室を肥やせる特徴3つ持ちのキャラ

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 デッキ内容はシンプルであり手札交換や2枚落下を駆使して控え室に特徴を13種と千鳥、クロックに赤、手札に電源とエムラを揃えることだ。

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 この千鳥を前列に置いて相手のターンのコントロールを得るとどうなるか。レベル0を正面にプレイ→圧殺してもう1枚プレイ→2枚目を圧殺して1枚目をクロックアンコール→2枚目をクロックアンコールと山札が切れるまでこの手順を繰り返し相手を強制的にレベルアップさせてしまう強力なコンボが完成する。通常のデッキ相手であればこれだけでゲームに勝てるだろう。type0環境だと初手にプレイアブルなカードが2枚存在していないことが常であるので相手のマリガンを見て撃つタイミングを見極めたい。またTeir1である【エクゾディアジブリール】に対しては山札の枚数が少ないため確殺は不可能のためジブリールをレベル置き場に固定することを目標とする。
 下準備こそ必要なものの手札に必要なカードは2枚と4枚要求するジブリールに比べ遥かに容易だ。1ターン目に勝つ可能性を秘めながらコンボ一辺倒だけでない汎用性の高さが魅力だ。銀枠環境のTeir1デッキとして環境に居座り続けることとなるだろう。
 それでは今度こそお別れだ。次の記事でお会いしよう。