ヴァイスtype0メタゲーム考察その3

  全世界70億人のヴァイスプレイヤー、そして1億人のtype0プレイヤーの諸君こんにちは。今回も大人気フォーマットtype0の考察記事だ。

 さて前回の記事で紹介した通りtype0のメタゲームを支配しているはミラーを意識したラインハルトコントロールだ。継続的なミルと相手のミルを封じる盤面支配力を有する強力なデッキだ。type0のメタゲームは終結したかに思えたがtype0といえどTCGの1つのフォーマット、新しいカードの登場でメタゲームは急激に変化する。

 

 みくるメタの登場 記憶の結晶

 

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 みくるは【みくるループ】成立以来type0環境の第一線で活躍し続けてきた優秀なカードだ。除去避け、継続的なミル、ラインハルトの条件の補助と役割は多岐に渡り、このフォーマットのために生まれてきたと言っても過言ではないカードだ。思い出置場という領域はこれまで干渉されず安全とされてきた。このカードの登場までは。

 記憶の結晶の登場によりミルの安定性が大幅に損なわれることになった。みくるの能力の後に記憶の結晶を当てられると勝ち筋となるセイバーとみくるを同時に失うことになり、ダメージレースで不利になってしまう。またみくるの能力を使用しない場合もラインハルトの的となってしまうためやはりセイバーを失うことになる。これによりミルの先撃ち不利という定石が生まれてしまい、メタゲームがまた振り出しに戻ってしまった。

 

Deck.12【魂の還元ミル】

 セイバーとみくるによるミルが封じられた以上別の勝ち筋を見つけるしかない。そこで白羽の矢が立ったのがこのウィズだ。彼女は現時点で唯一後列で発動できるミルの持ち主だ。幸い対応のCXは扉のため回復や七海との併用は問題無い。あとは継続的なミルを行うギミックを考えるだけだ。

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  使用するのは4枚のめぐみんとクロック置場にタカヤを1枚だ。それに加えウィズと魂の還元の6枚コンボとなる。手順としては魂の還元を貼ってめぐみん2枚をディスカードしてミル起動→前列のめぐみんでチャンプアタック→扉トリガーで手札コストを回収→リバース時にタカヤのアラームで回収。これを2回繰り返す。この動きの強みはたとえ相手がラインハルトであってもターンプレイヤーの優先権で手札に回収できる点だ。また優先権の無い相手ターンであってもめぐみんの移動能力でラインハルトの思い出送りから逃れることができる。(ラインハルトは単騎でしか能力を発揮できないので確実に逃げることができる。)またこのフォーマットではコンボパーツさえ引き切れば確実にキャンセルでき相手ターンまでアラームを維持できる。たとえチャンプアタックの対象がなくても返しのターンに回収が可能だ。

 だがこのデッキはコンボパーツの多さ、アラームという不安定さ、除去耐性の薄さなど欠点を挙げればキリがなく未完成と言わざるを得ない。特にコンボパーツの多さは致命的で7枚を引かなければミル自体始動することすらできない遅さ、メタカードを採用しづらい構築の幅の狭さは今までのデッキと比べて大きく劣っている点だ。コンセプトとしては唯一ではあるがメタゲームに食い込むことは無理だろう。

 

Deck.13【エクゾディアアクエリアス

 ヴァイスtype0はフォーマット成立以来、ミルに支配され続けてきた。前環境で猛威を振るい続けた【ラインハルトコントロール】もミルの延長線上である。勝ちに行くプレイであるミルも、あくまで相手の勝ち筋を潰していく戦術であり、「負けないこと」を前提として始まった【CX6000】の時代から変わらないtype0の伝統だ。

 みくるに対するメタが生まれ膠着したメタゲームを打破するためにはミル以外の別のアプローチが必要だった。別のアプローチとは即ち銀枠の【エクゾディアジブリール】ような即死コンボだ。膠着したメタゲームを打破するためには既存のカードのみで成立する「エクゾディア」が必要だった。

 

 さて前置きが長くなってしまったがこれが新しいエクゾディアの全容だ。

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手順を説明しよう。

前提として相手の控え室に通常札(CX以外のカード)があり、自分の山札は全てCXとする。またループの証明の簡略化のため盤面に虚無のルイズAがいるものとする。

 

①ルイズAを圧殺し書き初め千歌をプレイ。確定でCXが落ちるので相手の控え室の通常札をデッキトップへ

②千歌を圧殺しアクエリアスをプレイ。相手に確定ダメージ、自分は確定キャンセル

③千歌を圧殺しマリエールをプレイ。確定でCXが落ちるのでストックへ。

④虚無のルイズBをプレイしマリエールをコストに集中起動。CXが2枚落ちるのでルイズA、千歌、アクエリアス、マリエールを回収。

⑤ルイズBを圧殺し執事助手エクレアをプレイ。相手のクロックの通常札を控え室へ。

⑥マリエールをプレイしストックへ。

⑦ルイズAをプレイし起動。ルイズB、エクレア、マリエールを回収。

→①へ戻る。(⑦の手順で回収するカードが1枚余裕があるので実際のプレイ時は1ループごとに千歌、アクエリアス、エクレアを順に挟むことができる。)

 

これが無限ダメージループの全容である。相手のデッキに1枚でも通常札が残っていれば確殺が可能である。説明では控え室に通常札が落ちているところからスタートしたが実際のプレイではあまり起きない状況である。(ミル環境からの定石で通常札を控え室に晒すのは悪手とされている。)しかしループ自体はアクエリアスだけでも成立するのでダメージで通常札が出るまでアクエリアスをプレイすることで上記のループと同じ状況を作り出すことができるのである。

 またこのループの強みはルイズ2枚とマリエール1枚からでもコンボスタートできる速さも強みだ。ルイズの集中でキャラ2枚の捲り方をするかマリエールでキャラが落ちない限りループが途切れない。集中でキャラCXという捲り方をすればパーツを集めながらデッキを掘り進めることができる。またアクエリアスのレベル1という欠点も無限にリフレッシュダメージを受けて先上がりすることで問題とならない。理論上先行ワンキルも可能な強力なデッキに仕上がっている。

 また相手のデッキの通常札の残りが1枚であった場合、レベルアップ時にレベル置場に逃がされた場合打点を作れない問題が発生する。それはクロック6まで確定ダメージで通し残りの1点をリフレッシュダメージで通すという方法でケアできる。アクエリアスだけのループでも無限にリフレッシュさせることが可能のためエクレアの能力でクロックに通常札を置かせなければCXだけでレベルアップさせることが可能である。

 無限にリフレッシュダメージを与えることができるということは確定ダメージのギミックは必要ないように思えるが、無限にリフレッシュさせるということはループする側も無限にリフレッシュするということを忘れてはならない。1ループでの山札の消費はルイズで2枚×2、アクエリアスで1枚、マリエールで2枚の7枚、相手の山札の消費はアクエリアスとエクレアの2枚だ。単純計算で山札7周する度に相手の山札を2周させられるということになる。エクレアと千歌を合わせることで9枚のループで1点出せるため54枚=約1周(1周を50−コンボパーツ6枚の44枚で仮定)で6点出せるのは破格と言わざるを得ない。自分1-0相手0-0スタートと仮定すると確定ダメージで24点、リフレッシュダメージで4点必要となる。こちらが受けるリフレッシュダメージを上記の式で当てはめると9×24=216枚=約5周、7:2=14:4=14周の計19点。1-0でコンボスタートできれば3-5でフィニッシュすることができる。

 

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そしてこれがエクゾディアアクエリアスデッキリストだ。採用CXは3種類と散らしてある。それぞれの採用理由を簡単に説明しよう。

 

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キャントリップ…最も多く打つことになるCX。通常ドローとクロックドローと合わせて毎ターン4枚のドローを可能にしコンボパーツを揃えるのを助ける。単純計算で10ターンで山札を引ききることが可能のため遅くとも11ターン目にはコンボをしかけることができる。キャントリップを採用できないデッキに対しては山札を掘るスピードだけで優位に立っているといえる。

 

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控えストブ…集中をループ完成前のパーツ集めとして起動する際に使用。またルイズとマリエールでループを開始した際マリエールでキャラが落ちてしまった時の保険にもなる。現在のメタゲームでは後列除去が存在しないためルイズを引くまではキャントリップ、引いてからはストブと打ち分けてパーツを集めていっていいだろう。

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ブリリアントパーク…相手にアグロプランをとられコンボパーツが控え室に落ちてしまった際に使用。単純にコンボ完成が早まるだけでなくミルのケアにもなる。このカードの存在のおかげでキャンセルによるコンボパーツの落下とミルを同一ターンに行う必要性が生まれた。地味ながら本アーキタイプの強化に貢献した優秀なCXだ。

 

Deck.14【エクゾディアアクエリアス(改)】

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 エクゾディアアクエリアスを研究するにあたりある問題が浮き彫りになる。【CX6000】に勝てないという問題だ。正確にはデッキ枚数の規制により50枚なのだがこのCXだけのデッキに打点を通す術が無いのである。またCXだけのデッキに限らずどんなデッキでも通常札を引ききられてしまった場合、同様の状態に陥る。コンボパーツ6枚引き切りが前提のコンボのため通常札6枚未満のデッキであれば高い確率で起こり得る。

 【CX6000】に勝つためにはどうするか。その答えは歴史が証明している。無限回復ギミックを積むだけである。回復カードとして使用するのは実質コスト1でプレイできる葉留佳だ。既存のループで無限にリフレッシュしレベル3まで上げた後、マリエールを2枚プレイ。葉留佳をプレイしキャラ(主にアクエリアス)をコストに回復を行えばその後の集中で全てのコストを回収できる。

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 【エクゾディアアクエリアス(改)】の強みは例え相手のデッキがCXだけだとしても貫通できる点だ。以前有効だったコンボ完成前に通常札を引き切るという対策をとることができない。また1-0でコンボスタートしなければ勝ちきれなかった以前に比べ自分のクロックを気にせずにクロックドローが可能になった点も強化といえるだろう。さらに回復ギミックを組み込んだことにより山札の消費枚数を気にしなくて済むようになったため虚無のルイズの枠を4枚集中である如月影二に変更している。この変更により序盤のパーツの集めやすさが大幅に向上したことも見逃せないメリットだ。

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※ルール改定に対する謝罪

 

【エクゾディアアクエリアス(改)】の成立をもってtype0総合ルールに以外の項目を追加する。

 

5.デッキの下限枚数を50枚とする。

 

  アクエリアス環境における最大の対策が相手より先にコンボパーツを揃えることになってしまい、何が起こったか。【エクゾディアアクエリアス(改)】は今や早期コンボ完成とためにデッキ枚数を削る段階に来ている。リフレッシュの回数を気にする必要がなくなったため山札の枚数が少ないことがデメリットにならないためである。これは銀枠環境の【エクゾディアジブリール】や【エムラシュート】といったデッキと同じ現象だ。 

 コンボデッキは極限までデッキ枚数を絞れる一方でミルデッキはコンセプト上デッキ枚数を削ることができない。20枚のコンボデッキより先に50枚のミルデッキがミルパーツを引き切ることは不可能に近くアンフェアなゲームと言わざるを得ない。銀枠というジョークカードの範囲であれば許容していた部分もあったがtype0の競技性を守るためにルール改定の必要があると我々は判断した。主に銀枠環境でプレイしてくれているtype0プレイヤーの方々には深く謝罪したい。しかしワンキル特化ではなくなったことにより構築と環境の幅が広がり競技性は格段に増したといえるだろう。

 

総括とあとがき

 アクエリアスの登場はtype0のメタゲームを別次元のものへと昇華させた。控え室のカード1枚をめぐる攻防から一転ワンキルコンボを揃えるかどうかの勝負へとなってしまった。コンボに対してコンボをぶつけるという構図になってしまいメタゲームが正しく機能しているとは言い難い。現在のカードプールではこれに対抗する術がないため名残惜しいが今回の記事でtype0メタゲーム考察は最終回とさせて頂く。

 type0を終わらせたのは意外にも黎明期から存在していたカード達だった。我々が他のデッキを考察している間にもtype0のメタゲームは完成していたのかもしれない。では今までのデッキ達は無駄だったのか、私はそうは思わない。type0の考察は思考実験だ。その魅力と面白さは結果ではなくどうやって勝つかを考える過程にある。たとえ最適解でなくともそれを見つけるまでに生まれた数々のデッキは我々にとってかけがえのない財産だ。type0をプレイしない層に向けてこれらのデッキを紹介できたことを光栄に思う。今回で最終回だがメタゲームが動き【エクゾディアアクエリアス(改)】が過去のデッキとなることも大いにあり得る。なぜなら諸君らが知っての通りヴァイスシュヴァルツの可能性は無限大なのだから。それではまたの記事で会えることを祈っている。良きtype0ライフを!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Deck.EX3【A.E.D(Aquarius Endless Deck)】

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 アクエリアスの影響は銀枠環境にも及んでいる。総合ルールの改定で【エクゾディアジブリール】と【エムラシュート】が弱体化した現在銀枠環境のメタゲームに食い込むことに成功している。その要因がデッキ名にもなっているAEDだ。

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 CXの枠でありながらノーコストかつインスタントタイミングでレベル置き場1枚分という脅威の回復量を誇るパワーカードだ。これを回復の枠に採用することで通常札のコンボパーツを5枚まで減らすことに成功している。このようなパワーカードが今まで日の目を見なかった理由は環境にそぐわなかったというただ1点だ。ジブリールに対しては50点貫通で死ぬため打つ暇がなく、エムラクールに対してはターンを奪われた時に空打ちされて負け筋になるためである。

 

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 デッキの動き自体は既存のループに神通改二を加えただけで単純だ。アクエリアスループでリフレッシュダメージを重ねた後AEDで回復、そのリフレッシュ後に神通改二でAEDをサーチしアクエリアスをディスカード、影二でコスト分を回収。リフレッシュダメージでAEDが落ち続けない限りループが成立する。

AEDを複数枚積めばケアできると考える人もいると思うがAEDの永続効果で「このカードと同じカード名のカードはデッキに1枚しか入れることができない。」という縛りが存在する。type0であれば枚数を無視できるという意見もあるがtype0総合ルール3に「その他のルールは通常のルールに則る。」とありカードの効果はルールに勝つというTCGの不文律がある。今回はそのルールを遵守しこのような構築になったことをご容赦いただきたい。)

 銀枠環境は主要デッキ3種がせめぎあっている状態で非常に面白い環境となっている。機会があれば是非プレイしてもらいたい。そしてこれが恐らく正真正銘最後のデッキ紹介だ。最後まで読んでくれて本当にありがとう。君たちのtype0参入を心待ちしている。それでは良きtype0ライフを!!!!!