ヴァイスtype0 メタゲーム考察その4

 全世界70億人のヴァイスプレイヤーの皆様こんにちは。最後の更新から2年以上経ってしまい、世界のヴァイス人口も80億人を超えてきただろうか。この2年の間にもtype0のメタゲームは常に変化し続け今回ようやく完結の目処がついたため筆を取った次第である。

 
消えていったメタデッキ達
 type0のメタゲームがアクエリアスに支配されて以降、プレイヤー達は常にアクエリアスを倒す術を模索してきた。白羽の矢が立ったのがこういったメタ能力を持ったキャラ達である。しかし手札の要求値の高さ、デッキ構築の難度、フィニッシャー不足という問題を払拭することが出来なかった。また追い討ちとなったのが新型コロナウイルスによる大規模大会の中止。メタデッキは遂に完成を見ないまま歴史に埋もれてしまったのである。
 

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最高の初動 すみれ登場
帝国華撃団総司令 すみれ
 大会が開かなくとも新しいカードの登場によりメタゲームが変化するのはTCGの常でありtype0においても同様だ。まずは能力について解説していこう。
 ストックを増やす①の能力だが既存のカードと異なる点は山札を参照するのが上1枚ではなく上2枚である点と自身が場に残る点である。前者は言うまでもなく既存の上位互換でありCX以外のカードを増やした構築であっても安定したストックブーストを行うことができる。後者は場に残る点を活かした2枚レスト型の集中を採用できる点で既存のカードに優っている。逆に既存のカードに劣っている点としてストブの条件に控え室に同特徴のキャラを必要とし最低でも2枚でなければ機能しない点が挙げられる。しかしこれは②の能力によって全く問題にならない。
 ②の能力自体はよくあるcipと自傷による墓地回収である。しかしこのカードが今までのカードと異なる点は①の能力で貯めたストックをこの回収に充てられる点であり、ひいては自身と同名カードを回収できる点である。すみれが初手に2枚(もしくは手札に1枚、控え室に1枚)あるとどうなるか。トップ2枚がCXである限り自身で自身を回収し自傷と墓地肥やしを行うループが発生するのである。そして3枚あればループの途中で落ちた集中を回収し3枚目で集中のコストを貯めてそのままアクエリアスループに持ち込むことすら可能なのである。
 
Deck.15【すみれループ】
 このすみれの登場はtype0というフォーマットをさらに上のステージに昇華させた。今までコンボパーツを引くまでドローゴーを行う悠長なゲームプランをとっていた。既存のデッキがCXを盾にゆっくりコンボパーツを集めるコントロールコンボなのに対しこの【すみれループ】は1ターン目からコンボ成立を狙うオールインコンボなのである。かといって受けが弱くなるというわけではなくコンボ以外では絶対に負けないCX密度を保っている。また墓地回収がコンボの起点となる性質上生半可な攻撃はコンボパーツを揃える手助けになる可能性があり、受け性能はむしろ向上してるといえるだろう。
 
type0の「王」の誕生
“ガレット・デ・ロワ” チノ
 すみれを史上最高の初動と称したがあくまでも2枚初動。このチノの登場はすみれの記録をすぐに塗り替えることとなった。type0待望の1枚初動の誕生である。
 改めて能力の方を見ていこう。手札から舞台に置かれた時、トップがCXなら青か同特徴のキャラを2枚手札に加えるというもの。普段ヴァイスをプレイされている方ならこの2枚サーチがどれだけぶっ壊れているかすぐに理解できるだろう。通常の構築に入るカードですら1コストと1ディスカードで同特徴のキャラを1枚サーチなのだ。ノーコスト2アドカードはあのancestral recall以上と言っても過言ではないだろう。
 しかしこのカードの強さはアドバンテージ獲得能力ではなく確定サーチの点にある。たとえサーチ前や後に2枚ディスカードがあったとしても使われていたであろう。(これはtype0が手札の数に関係なくコンボパーツさえ揃えばいいという特殊なフォーマットのためである。もちろん連打のしやすさ、ディスカードコスト回収の手間を考えればノーコストに越したことはない。)このカードの恐ろしさは同特徴のキャラだけでなく青のキャラをサーチ、つまりすみれをサーチできる範囲の広さにある。またチノ自身もサーチ範囲に含まれており、2枚目3枚目のチノをサーチして山札を圧縮し手札を増やしながらすみれをサーチしに行ける。
 また細かい強みになるがレストや生け贄を必要とせず盤面に残り続ける点も2枚レスト集中を使用する既存の構築を崩さない点で優秀である。使い切りではなく盤面でレストコストとして使用することで2アドの分を十二分に発揮することができる。またCX参照が公開ではく控え室におくなので2枚引いた際に1枚目のチェックが失敗したとしても2枚目のチェックを阻害しない(むしろ成功率が上がる)点も見逃せない強みだ。さらにループ成立後の山札調整としても優秀で山札が2枚以下なら圧殺しながら2回プレイすることでリフレッシュ後に圧殺した分の2枚をサーチして山札をCXだけに保つことができる。
 短いテキストのカードは強いという格言があるがまさにその通りでチノには語り尽くさないほどの強みがテキストに隠れている。この性能はtype0史上、いやヴァイスシュヴァルツ史上最高のカードといっても差し支えなく、まさに「王」と呼ぶにふさわしいものである。
 
Deck.16【imperial order─王の命令─】
 ついにtype0史上最強のデッキが完成した。デッキ名はチノのフレーバーテキストに由来するものでまさにtype0の「王」にふさわしい名前になっている。注目すべき点はその先行ワンキル率の高さ。軽く回しただけで実に8割の成功率を誇る。エフェクトヴェーラーもforce of willも完全防御革命も存在しない環境でこの数字は驚異的といっていいだろう。
 それではデッキ解説の方に移らせてもらう。
ガレットデロワ チノ6枚
“ガレット・デ・ロワ” チノ
 突如現れたtype0の「王」。このカードの強さは上に述べた通りだ。適正枚数は5〜6枚。先行ワンキルの失敗パターンはこのカードを初手に引けないかデッキトップがCXでないかの2パターンであり多すぎても少なすぎても失敗の可能性がある。読者の方も実際に回してみて適正枚数を探してみてほしい。
帝国華劇団総帥 すみれ3枚

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 最強の初動の座はチノに明け渡すことになったがストブの性能は未だにトップクラスのこのカード。チノが引けないパターンでもこのカード2枚でチノが落ちるまでループさせることでコンボ成立につながる可能性がある。またこのカードの採用枚数−1枚がゲーム中に貯められる最大ストック枚数となる。このデッキは2コストで回るため最低枚数の3枚の採用となっている。
 type0を代表するフィニッシャー。このカードよりも緩い条件の勝ち手段を遂に見つけることは出来なかった。緑であるが故にチノでサーチできない点は注意しよう。
納得できる役は 矢澤にこ 1枚
“納得できる役は”矢澤 にこ
 リフレッシュダメージ回避のヒール枠。この枠に関してはレベル3のストックヒールでもいいのだがレベル1からループに入れる点、素出しして集中のコストになれる点を評価しての採用となった。なおこのデッキにおけるヒール成功率は当然100%である。
welcome! チノ 1枚
Welcome! チノ
 ループに必要な集中枠。すみれの登場以降は単レスト集中を2枚採用するのではなく2枚レスト集中を1枚採用するのが主流となっている。ガレットデロワチノでサーチできる青の集中はこのカードを除けば3種類(それぞれ指定なし4枚集中、X枚集中(Xは舞台の色の数)、5枚集中(門指定))しか存在せず半ば消去法での採用である。しかし5枚集中は破格の性能であり自身の色とCXの色も噛み合うこのカードの存在はまさに奇跡の1枚といえる。
おかえりなさい 38枚
おかえりなさい
 自由枠に見えるCX枠。しかしこのカードの存在がwelcomeチノを奇跡の1枚たらしめている。色がアクエリアスと同じ「緑」でチノが指定する「おかえりなさい」であるCXはこのカード1種類しか存在しないためである。ストブでもキャントリップでもないためCXの性能としては若干落ちるがワンキルプランには関係ないこと、welcomeチノのルーティングで若干軽減できることから些細な問題としている。
 
【imperial order】プレイング解説
 それでは実際にこの最強のデッキを回してみよう。このデッキの目標はデッキ内のCX以外のカードを引き切りアクエリアスを無限に出すループを完成させることである。そのためには手札と控え室にすみれを1枚ずつ揃えた上でwelcomeチノ(以下集中チノ)の集中を成功させること、これが一先ずのゴールとなる。一度でも集中が成功すれば二度目三度目の成功は容易であり自然とコンボパーツが集まる。
 マリガンでキープするカードはガレットデロワチノ(以下王チノ)、2枚目以降のすみれ(1枚目はストブとして期待できずどちらにせよ圧殺して控え室に置くため)の2種類だけである。とにかく王チノを全力で探しに行くことがこのデッキの基本方針だ。
 1枚目の王チノのCXチェックを成功させることがコンボ成功の第一条件だ。コンボ失敗パターンのほとんどがこの1枚目の失敗か王チノ自体引けないパターンのどちらかでありtype0の対戦において最も緊張する瞬間だ。デッキトップのCXの有無で一喜一憂する実にヴァイスシュヴァルツらしさがありtype0と言えどヴァイスシュヴァルツのフォーマットであることを実感できる。王チノでサーチするのは2枚目と3枚目の王チノであり、デッキ内の王チノを引き切るまでこれを繰り返す。5枚目と6枚目ですみれ3枚と集中チノをサーチできれば山札にはにことアクエリアスしか残っていないためすみれのストブは100%成功する。これで墓地回収集中のループが完成するのでにことアクエリアスが落ちるまで集中を繰り返そう。
 CX以外のカードを全て回収しきったらいよいよ無限バーンのループの時間だ。(なおアクエリアスを出すためにはレベル1まで上げる必要があるが集中ループが完成していれば無限にリフレッシュダメージを受けることができ、すみれループで無限に自傷することも可能のため大した問題にはならない。)
 
①手札 すみれ×2 アクエリアス にこ 王チノ×3
 盤面 王チノ(レスト) 王チノ 王チノ
     すみれ(レスト) 集中チノ
 ストック0
    控え室0
②すみれを圧殺してアクエリアス
③王チノを圧殺してすみれ→ストック+1
④すみれを圧殺してにこ→ストック−1
アクエリアスを圧殺してすみれ→ストック+1
⑥にこを圧殺して王チノ
⑦王チノとすみれで集中起動→すみれ×2、アクエリアス、にこ、王チノを回収
→①に戻る
 
 今回はループ証明をわかりやすくするためにヒールとバーンを同じループ内に組み込んでいるが実際はヒールの必要がないパターンもあるため手順が異なる場合がある。また①の盤面に戻すために王チノとすみれで集中を行っているが途中でにこやアクエリアスをコストに集中を起動して山札調整をしても構わない。
 
 アクエリアスループは無限ループたりえるか
 さてここで上記の無限バーンのコンボは無限ループといえるかどうかという問題に差し掛かる。無限バーンは即ち無限ループではないのかと疑問に思う読者も多いかもしれないがここで言う無限ループとは省略可能なループかどうかという一点に尽きる。コンボ成立すれば残りの手順を省略して私の勝ちですと言えるかどうかというものだ。
 結論から言えば無限バーンではあるが省略可能な無限ループではない。確かに無限にアクエリアスをプレイできるし、無限ににこもプレイできる。しかしこのループには山札の枚数という限界がある。⑦の時点で山札の枚数が5枚以下の場合集中で回収するカードがリフレッシュで山札に返ってしまいループが途切れてしまうのである。山札の枚数を常に一定の枚数であればループを成立させることができるがマリガンで捨てたCXの枚数によってコンボパーツを引き切った後の山札の枚数が決定するため一定に保つのは困難もいえるだろう。
 そのため山札の枚数を調整する必要が生まれるのだがそこでも力を発揮するのが王チノとすみれだ。
 
5枚 すみれを圧殺しすみれ→山札−2、ストック+1→能力ですみれ回収→山札−1 クロック+1→すみれを圧殺し王チノ→山札−1→王チノを圧殺し王チノ→山札−1(リフレッシュ)→すみれと王チノをサーチ
 
4枚 すみれを圧殺しすみれ→山札−2、ストック+1→能力ですみれ回収→山札−1 クロック+1→すみれを圧殺し王チノ→山札−1(リフレッシュ)→すみれをサーチ
 
3枚 王チノを圧殺しすみれ→山札−2 →すみれを圧殺し王チノ→山札−1(リフレッシュ)→すみれと王チノをサーチ
 
2枚 王チノを圧殺し王チノ→山札−1→王チノを圧殺し王チノ→山札−1(リフレッシュ)→王チノ×2をサーチ
 
1枚 王チノを圧殺し王チノ→山札−1(リフレッシュ)→王チノをサーチ
 
 このように全てのパターンでCXだけを山札に返す完全なリフレッシュが可能である。なおこの手順は集中をプレイした後、アクエリアスをプレイする前の②の時点で行うのが望ましい。また今回のループでは都合13枚の山札消費を要することから山札が13枚以下の場合は常に山札の枚数を意識する必要があり、早めに集中を起動するなど手順が変わりうる。この山札の枚数によって手順が変わってしまうというのが無限ループにたりえない証拠でありtype0最強デッキの唯一の課題となっている。現行のルールでは50枚の制限があるため問題にならないが仮に【CX6000】が健在だった場合一体どれだけの人間が勝利までこのデッキを回し続けることができるだろうかと恐ろしい想像をしてしまう。コンボ環境において50枚上限のルールは不要かと思われてきたがプレイヤーの心を折る番外戦術に持ち込ませないために必要なルールだと改めて実感した。
 
さいごに
 type0のデッキは飛躍的な進化を遂げ今や8割の先攻ワンキル率を10割に近づけることだけが残された課題となっている。もはやメタゲームといえるものはなくなってしまい考察の意義も薄れてしまった。今回の記事もメタゲームの変化というよりもコンボデッキの発展というのがメインでメタゲームについてはあまり言及できていない。よって今回で本当の最終回とさせていただく。これまで読んでくれてありがとう。コロナが落ち着いたらWGP会場のサイドイベントでお会いしよう。それでは良きtype0ライフを!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ここまで読んできたくれた方には申し訳ないが今回はDeck.EXを用意することはできなかった。代わりと言っては何だが文章では伝わりにくかった人向けに無限バーンの手順を画像付で見ていこう。
①初期盤面です。

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アクエリアスをプレイしてバーンを狙います。

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③すみれをプレイしてストックを確保します。

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④にこをプレイしてヒールを行います。

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⑤すみれをプレイして集中用のストックを確保します。

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⑥王チノをプレイしてにこを控え室に送ります。

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⑦集中で一気にコンボパーツを回収します。これで初期盤面に戻りましたね。

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Deck.16【imperial order─王の命令─

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